ZX-9R E型(2002年) 納車整備
前回ZX-9R F型の整備作業をご紹介しました。今回はZX-9R E型の整備作業をご紹介します。
1994年から発売されたZX-9R。
2002年に発売されたE型は初代から数えて3世代目になります。
2000年に発売されたC型からの大きな変更点はフロントカウルなど外装の変更や、フレーム、スイングアームなどの骨組みの改良が施されています。
他メーカもモデルチェンジをしていてその流行とも言えるデュアルヘッドライトになったのがこのモデルからになります。
Kawasakiではこの頃にZX-12Rの発売も開始されていてこちらもデュアルヘッドライトで似ている顔つきになっています。
ZX-9R E型の整備です。
ラジエターキャップを確認します。
長期間締め付けられていることと、高圧・高熱な環境にさらされているゴムにはやはり型がついてしまっていました。
新品と並べてみると、跡がついているのがよくわかります。
冷却液もドレンから抜いて交換します。
エンジン周りの作業に取り掛かります
タンクを外しエアクリーナーのケースを開けるとエアクリーナーフィルターが見えます。
とりだしてみると少し汚れがありました。
新品と並べると汚れ具合がはっきりとわかります。新品に交換します。
こちらの車両は整備作業前にカーボンクリーニングを施工しています。
エンジンインテイクバルブをのぞいてみると綺麗。
F型のカーボンクリーニング施工前の写真と見比べると一目瞭然。
左がカーボンクリーニング施工後のE型のバルブ。右がカーボンクリーニング施工前のF型のバルブ。
こんなガビガビしたものが付着しているとエンジンの性能を発揮できないどころか、燃費にも影響してしまいます。
カウルを全体的に外しエンジン・ヘッド周りの整備をすすめていきます
エアクリーナーボックスを取り外しすと、ヘッドカバーが見えます。
プラグコード、プラグなどを取り外しエンジンのヘッド周りの整備をおこないます。
なかなか掃除ができない部分でもあり、むやみに洗車でザブザブ洗うわけにもいかないデリケートな部分なので、汚れがどうしてもたまってしまいます。
左側の写真はエンジン側面側がとても汚れています。
カウルの隙間から吹き込む汚れが、どうしても堆積していってしまいます。
ヘッドカバーを外し内部の点検と整備を行います。
プラグホールのガスケットが密着している部分は跡が残ってしまっているので、より密着させるために綺麗にクリーニングします。
ヘッドカバーのガスケットには劣化でひび割れがありました。オイル漏れの原因となるので新品と交換します。
内部の点検と整備、清掃。ヘッドカバー周りも清掃し、新品のガスケットと交換して組み上げます。
外したプラグも確認します。
インテークマニホールドのマウント部分を綺麗に磨き上げに耐熱シール剤を塗布します。
左が清掃前の状態。右が清掃して耐熱シール剤を塗布した状態。
フロント周りの整備を行います
ステムの点検と整備は必須
ステムを分解していくと、ステムベアリングのグリスに隙間が。。。
これでは湿気や雨水などの浸入でベアリングが錆びてしまいます。
外してみるとダスト汚れにそれと混ざって固形化したグリスで汚れています。
ベアリングは新品に交換。受けも綺麗に清掃してみると状態はとても良さそうです。
フレーム側ベアリング受けにたっぷりとグリスを充填
ステムも綺麗に清掃してこちらにもたっぷりとグリスを充填
湿気や水分が浸入する隙間なく充填することで、ハンドリングの要であるステムを良い状態に保てるようにします。
また、段差に勢い良く乗り上げたり、ウィリーで乱暴に接地したりするとこの部分に衝撃によってベアリングの打痕が残ってしまい、傷が入ってしまいます。
湿気や水分の混入でサビが出てしまうと同じように動きが悪くなってしまいます。
傷やサビはいったん入ってしまうと自然に消えるものではありません。引っかかるような違和感が残ってしまいますので、注意してください。
フロントわまり。お次はフォークの整備を行います。
樹脂は劣化するもの。これもダストシールにクラックが見つかり新品と交換します。
フロントフォークを分解して整備を行います。
左の写真はフロントフォークのオイルロックピースです。
表面にはフォークオイルに何か混ざったような、なんとも言えない色の液体がまとわりついています。
スラッジがだいぶ出ているようです。他すべてのフォークパーツと一緒に洗浄します。
洗浄後、ガスケットなど劣化パーツ全てを交換し組み上げていきます。
フロントホイルのハブベアリングを交換します。
こちらハブベアリングのグリスにダストが混ざった汚れがこびりついています。
ベアリングは新品に効果。ホイルは清掃しグリスを充填して仕上げます。
そして、エアバルブも交換。綺麗になったフロントホイルが仕上がりました。
クラッチレバーです。
レバーを外してみるとブッシュに汚れが。
常に稼働する部分なので磨耗や混入した汚れなどとグリスが混ざり合っています。
このままでは動きがスムーズではなく放置するとブッシュが磨耗して削れてしまったりします。
クリーニングしてグリスを充填します。
フロントブレーキキャリパーのオーバーホールです。
バラしてみると汚れや錆があります。
こちらも常に稼働する部分です。
「ブレーキをかけてポッドは押し出されたけど戻らない。」とか。
こすれあう金属やホコリや油分などと水分がまざり固着してしまうと動きが悪くなってしまいます。
「動く。止まる。曲がる。」の「止まる」という安全面での最重要パーツです。
定期的なメンテナンスをおこなってつねにスムーズに稼働するようにしたい部分です。
クリーニングし、ダスト&オイルシールの交換をして組み上げます
キャブレターも分解清掃・整備をします。
F型のキャブレターとE型のキャブレターは形状が違うんですね。
左の写真がE型。右の写真がF型になります。
「樹脂は劣化するもの割れるもの」ホースは劣化してひび割れていました。
クランプの止まっていた部分も、締め付け時に巻き込んでしまったのでしょうか、外側も傷がついてささくれています。
これでは燃料漏れをして車両火災を起こす可能性がありとても危険です。
新品と交換します。
今回は燃料ポンプも新品に交換しました。
並べてみると当たり前ですが輝きが違います。
ホースも交換し燃料系統はこれで安心です。
燃料コックの整備もしました。前回のF型同様ここの樹脂部品も交換しました。
リア部分の整備です
リアホイルのハブベアリングもフロント同様に汚れと劣化があるので交換。
ハブ部はスコッチブライトで清掃します。
スプロケット側も同じく交換。清掃して新品のベアリングをグリスと一緒に装着します。
リアブレーキキャリパーもオーバーホールしました。
稼働するパーツは常にスムーズに動いているか、動くようにしているかで安全と快適な走行ができます。
異音や振動、違和感などは早めに見つけてメンテナンスするようにしましょう。
パーツの傷は放置していても自然治癒することはありません。かえって悪化してしまいます。